学歴 | |
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昭和62年 | 京都大学医学部 入学 |
平成4年 | 京都大学医学部 卒業 |
職歴 | |
平成4年 | 聖隷三方原病院 研修医 |
平成6年 | 同上 ホスピス 医員 |
平成14年 | 同上 ホスピス 医長 |
平成15年 | 同上 緩和ケアチーム 医長 |
平成17年~ | 同上 緩和支持治療科 部長 |
平成17年~ | 聖隷クリストファー大学大学院臨床教授 |
平成24年~ | 京都大学医学部臨床教授 |
平成26年~ | 聖隷三方原病院 副院長 |
研究歴 | |
平成12~13年 | 国立がん研究所支所 精神腫瘍学研究部 外来研究員 |
平成12~15年 | 厚生省がん研究助成金研究「終末期がん患者に対する支持療法の適応に関する研究」班 班員 |
平成13~16年 | 厚生科学研究「緩和医療供給体制の拡充に関する研究」班 班員 厚生科学研究「がん医療における緩和医療及び精神腫瘍学のあり方と普及に関する研究」班 班員 |
平成16~25年 | 厚生科学研究(第3次対がん総合戦略研究事業)「QOL向上のための各種患者支援プログラムの開発研究」班 班員 |
平成18~21年 | 厚生科学研究(がん臨床研究事業)「緩和ケアのガイドライン作成に関するシステム構築に関する研究」班 班員 厚生科学研究(がん臨床研究事業)「地域に根ざしたがん医療システムの展開に関する研究」班 班員 |
平成19~24年 | 厚生科学研究(第3次対がん総合戦略研究事業「がん対策のための戦略研究」「緩和ケアプログラムによる地域介入研究」班 リーダー補佐 厚生科学研究(がん臨床研究事業)「がん患者のQOLを向上させることを目的とした支持療法のあり方に関する研究」班 班員 厚生科学研究(がん臨床研究事業)「がん患者に対するリエゾン的介入や認知行動療法的アプローチ等の精神医学的な介入の有用性に関する研究」班 班員 |
平成19年~ | 厚生科学研究(がん臨床研究事業)「がん医療の均てん化に資する緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究」班 班員 |
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この発表で、私はまず日本における緩和ケアの現状を要約し、その後、OPTIMプロジェクトの結果や研究の意味を紹介する。OPTIMプロジェクトとは、様々な研究デザインを用いた緩和ケアプログラムの地域介入研究である。最後に、緩和ケア領域における複合介入研究の役割について論じてみたい。
OPTIMプロジェクトについては、各論文を読んでいただれば幸いです。
要約すると、OPTIMプロジェクトは、ミクスドメソッドデザインを用いた研究で、地域のがん患者に対する包括的緩和ケアプログラムが、2008年4月から2011年3月まで日本の4地域で実施された。介入は、教育、専門支援、ネットワークの構築、啓発を含む。主要評価項目は、自宅死亡率、専門的サービスの提供、患者・家族のQOL等である。我々は、その地域の代表性のある医療機関をサンプルに選び、介入の前後で、患者、遺族、医師、看護師へ、郵送法による質問紙調査を行った。患者は、転移性あるいは再発した肺、食道、胃、結腸、直腸、膵、肝、胆道系、腎、前立腺、膀胱、乳腺、卵巣、子宮のがんに罹患した成人の外来患者;遺族は、それぞれの地域の医療機関あるいは自宅で亡くなったがん患者の成人遺族;医師と看護師は、がんに関連した診療科に従事している病院の医師や看護師、一般診療クリニックを代表する医師、3年以上の臨床経験を有する地域全体の看護師であった。質的研究は、101名で施行された。
この研究に組み入れられた介入前後の全人数は、それぞれ、患者(介入前:859名、介入後:857名)、遺族(1110名、1137名)、医師(911名、706名)、看護師(2,378名、2236名)であった。
結果として、自宅死亡率は、6.8% から10.5%へ増加 (P<0.0001)、これは国内のデータより有意に多かった(6.7% to 7.7%, P<0.0001)。さらに、遺族の88%が自宅で死亡した患者は在宅死を望んでいたと確信し、介護負担の明らかな増加は示さなかった。緩和ケアサービスを受ける患者の率は有意に増加した(0.31 to 0.50, P<0.0001)。患者、遺族申告のQOLは、介入後有意に良好な結果が得られた(効果量:患者0.14, P=0.0027, 遺族 0.23, P <0.0001)。医師、看護師申告の困難感、特にコミュニケーションや連携に関しては、有意に減少した(効果量:医師0.52, P<0.0001, 看護師 0.59, P <0.0001)。質的研究では、専門職間のコミュニケーションや連携の改善が見られた。これは、様々なレベルで関わる機会が多くなったことに起因する。地域の包括的緩和ケアプログラムは、緩和ケア全体の質を向上することができる。
この研究により、緩和ケアプログラムの地域介入における統合的な有効性が明らかになった。それは、亡くなる場所、特別な緩和ケアサービスの利用、患者、家族が感じたQOL、患者のQOL、家族の介護負担、医師、看護師が感じた困難感や見識といった広い範囲のアウトカムの改善が得られた。プログラムでは全体的な利点が得られたわけだが、最も大きなインパクトは、量的、質的双方の研究で医療専門職間のコミュニケーションを改善したことが明らかになったことであった。我々の研究は、地域レベルでの緩和ケア改善に対して医療専門職間のコミュニケーションが極めて大切な意義をもつということに重要な見識を付加した。
我々の研究グループは、このプロジェクトから多くのことを学んだ。そして、緩和ケア領域においておそらくとても有用なリサーチ戦略として、複合介入研究の役割を共有したい。
Morita T, Miyashita M, Yamagishi A, Akiyama M, Akizuki N, Hirai K, Imura C, Kato M, Kizawa Y, Shirahige Y, Yamaguchi T, Eguchi K.
Effects of a programme of interventions on regional comprehensive palliative care for patients with cancer: a mixed-methods study.
Lancet Oncol. 2013; 14: 638-46
Morita T, Miyashita M, Yamagishi A, et al. A region-based palliative care intervention trial using the mixed-method approach: Japan OPTIM study. BMC Palliat Care 2012; 11: 2.
Imura C, Morita T, Kato M, et al. How and why did a regional palliative care program lead to changes in a region? A qualitative analysis of the Japan OPTIM-study. J Pain Symptom Manage
Morita T, Sato K, Miyashita M, et al. Exploring the perceived changes and the reasons why expected outcomes were not obtained in individual levels in a successful regional palliative care intervention trial: an analysis for interpretations. Support Care Cancer
(邦訳:森田達也・小池和彦)