Dept. of Special Anaesthesia and Pain Therapy
Medical University / AKH Vienna
Vienna, Austria
Since 1993, Hans G. Kress is Professor of Anaesthesiology, Intensive Care and Pain Medicine and Head of the Department of Special Anaesthesia and Pain Therapy at the Medical University/AKH Vienna, Austria. He is certified by the Austrian and the German Board of Physicians, with added qualifications in pain management, critical care medicine, emergency medicine and pre-hospital care.
Professor Kress is President of the European Pain Federation EFIC. He was founding chairman of the Task Force on Pain Management for the Austrian Society of Anaesthesiology, Resuscitation and Intensive Care Medicine, co-founder and executive board member of the Austrian Society for Palliative Care, and Past-President of the Austrian Pain Society, where he is a member of the executive board.
Professor Kress is deputy editor and associate editor of the European Journal of Pain and former co-editor of Acute Pain. He has authored numerous scientific articles, books and book chapters. His multiple clinical and experimental research interests include pharmacological treatment of acute and chronic pain, invasive pain therapy and neuromodulation in cancer and non-cancer patients, as well as neuro- and immunopharmacology of anaesthetics, analgesics and cannabinoids.
痛みは、抗がん治療を受けている患者の50-70%、進行がん患者の80%程度に生じる。痛みが緩和されない場合、がん患者に耐え難い影響を及ぼす。”がん性疼痛”は実体ではなくて、典型的には突出痛を含む急性あるいは慢性の痛みが混在した症候を示す。こういった痛みについて個々の特性、部位、機序を細かく分けてアセスメントを行うことは、有効な治療法を選ぶ上で必須のことである。それが、侵襲的治療に非侵襲的治療を加えるか、あるいはどちらか一方でも欠かせないことである。
WHO方式がん除痛ラダー(非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬の使用法)は、依然としてがん性疼痛マネジメントの主流をなすものである。モルヒネは、いまだにがん性疼痛のゴールドスタンダードのオピオイドと考えられている。フェンタニル、ブプレノルフィン、ハイドロモルフォン、オキシコドンのような新規μオピオイド受容体作動薬が普及してきており、こうした薬剤の目的はモルヒネと比べて有効性や安全性の面で改良しているということである。継続性があり利便性の高い治療であるフェンタニルやブプレノルフィン(オピオイドパッチ)のような経皮吸収型薬物デリバリーシステムの進歩や、マトリックスパッチ技術は、進行がん患者の疼痛マネジメントを促進させる。
フェンタニルの口腔粘膜、経鼻吸収、バッカル投与のようないくつかの新しい適用システムが使用可能になっている。こういったRapid-onset製剤は、迅速で効果的な除痛をもたらし、日々の生活での突出痛による負の影響を軽減させる。
革新的な中枢作用性鎮痛薬のタペンタドール(Nucynta®, Palexia®)は、一つの分子でμオピオイド受容体作用薬とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬という2つの作用機序をもった新しいクラスの強オピオイドである。
数千人の患者の登録研究において、タペンタドール徐放錠(50-250mg、1日2回)は、中等度から重度の慢性非がん性疼痛のマネジメントで有効で良好な耐用性が示されている。中等度から重度の慢性骨関節炎や腰痛に対してオキシコドン徐放錠との比較では同等の有効性をもち、胃腸への耐用性が有意に勝っていることが示された。最近完遂した多施設、プラセボ-アクティブ-コントロール、二重盲検、第3相試験では、中等度から重度の慢性がん性疼痛のマネジメントに対するタペンタドール徐放錠(100-250mg, 1日2回)の有効性と耐用性をプラセボや硫酸モルヒネ徐放錠(40-100mg, 1日2回)と比較している。タイトレーション完了時に薬物が奏功した率に基づくと、タペンタドール徐放錠はモルヒネ徐放錠よりその奏効率は下回らなかった。タイトレーションの間、治療下で発現した有害事象は、タペンタドール徐放錠では50.0% (169/338)、モルヒネ徐放錠で63.9% (101/158)、悪心・嘔吐や口渇の発生率は、モルヒネ徐放錠よりタペンタドール徐放錠で低かった。4週間継続投与の結果では、中等度から重度の慢性がん性疼痛のマネジメントにおいて、タペンタドール徐放錠はプラセボより有効であることが示されている。タイトレーション中に得られた結果に基づくと、タペンタドール徐放錠は、硫酸モルヒネ徐放錠(40-100mg, 1日2回)と同等の有効性を有し、胃腸障害が有意に少ないことが関連づけられている。
(邦訳:小池和彦)